一つ提起しておくだけのことはあることとして、胡適が30年代から《醒世姻縁伝》の作者に関する考証を始めて以来、六十年もの間、諸説紛々、一致した結論を見なかったが、これは考証の方法がいずれも大同小異であったということである。つまり、まず一人の作者を提唱した後、作者の思想、経歴を証明し、そのことから《醒世姻縁伝》のような小説を書ける人物を、またその作者の他の作品中から作風、創作手法、プロット、方言の使い方などから《醒世姻縁伝》との類似点を挙げて考証し、その作者こそ《醒世姻縁伝》の作者であると主張したことにある。筆者が思うに、別の考証方法によって、新たな突破口を見出なければ、《醒世姻縁伝》の作者は、相変らず謎のままで終始しよう。なぜなら、従来の考証方法で得る結論は、あくまでも憶測にすぎないからである。