70年代の前半、中国のレストランでは、もちろん、ホテルの中のレストランでも、客が持参する酒の持ち込みは、"許されて"おりました。今も、自由のところは、あるには、ありますが、なんとなく持ち込みにくい雰囲気が、どこのレストランにもあって、昔とは、違ってきました。それだけ、レストラン側も商業主義になって、客へ向ける眼の光が違ってきた、といえるのかも知れません。
一昔前のお話です。1996年の3月、雲南省の昆明に行った時でした。翠湖賓館の旧館のレストランに同行した台湾の友人が酒を持ち込んで、持込料金を出す、出さない、で、ひと悶着がありました。結局、払わされたのですが、この「持込料」という中国語が、ナカナカよくできた言葉、と思い出しましたので、書き留めておきましょう。それは、でした。開瓶費、「瓶を開ける費用」とは、なかなか、イイ。
もともと、中国の場合、宴会は、あくまでも酒は"従"で、料理が"主"。酒は、二の次、たしなむ程度に飲み、料理を存分に、満喫する、というのがメインですから、どんな酒だろうと、あなたのお好みのママ、自由に持って来て、随意にお飲みなさい、といった、きわめて、大らかなものだったように記憶します。
「こりゃ、中国人の気質が出ているじゃないか! 中国人も、なかなかヤルなぁ」
と、思ったものでした。しかし、今や、中国の世も、世知辛くなってきたのでしょうか、十億総拝金主義の傾向が出て来たのは、どうやら七十年代後半からでしょう、という言葉が、若者の間で、いいはやされ、金の儲かる仕事なら、なんでもイイ、やるッ! という風潮が出て来たわけです。
これは、という言葉をもじってできたもので、あの号令の「なおれッ!」、「マエヲー、ミヨッ!」とか、まじめな意味の「前向きに考えなさいよ!」の《向 前 看!》ののところに、同じ発音のを置き換えて「金のことを考えなさいよ!」、金、金、金の拝金主義を謳ったこのという言葉が、ひところ大流行しました。金の有ること、イコール成功者、という風潮が一般に定着して、品位の失せた今の世相に続いているように、見受けます。
しかし、誰が云ったか、こんな世相を皮肉った歌謡も出てくるあたり、なかなかどうして、辛らつな中国人もいるもいたものです:
「人口十億、九割は転がし屋、残る一割出稼ぎ屋」
この句の中ののことで「ブローカー」、「ころがし屋」を意味します。
総人口、十億のうち九億の人民は、口銭稼ぎに精を出し、残る一億も、故郷を離れて、西に東に、と、出稼ぎに、走り回っている! と諷刺しています。……愉快なこの句も、の項に入れてもいいでしょう。
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