深沢俊太郎

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深沢俊太郎の部屋
Shuntaro Fukasawa
新中国いろはたとえ歌留多


「新・新中国いろはたとえ歌留多」
(連載/月二回/毎月10日と24日更新)
No.46 2007年 1月10日
新中国いろはたとえ歌留多:連載No.46
 「江戸かるた」の"背に腹はかえられぬ"という句は、「そうするよりほかにうつ手がない」と、いいわけをするときに、よく使われる言葉です。この句は、どうも、弁解がましく聞こえて、筆者は好みませんので、この稿では、敢えて"背に腹はかえられる"と、しました。
 駒田信二氏の『艶笑いろはかるた』(文春文庫)の中に"背に腹をかえた"お話しが出てきます。女郎は、腹、つまり、前(マエ)で、営業し、おカマは、背、つまり、後(ウシロ)で、営業するというのは、お分かりいただけると思います。しかし、このオカマさんも、年とともに、営業箇所の括約筋が弛(ゆる)くなり、商売が振るわなくなります。食べていくためには、"背に腹はかえられぬ"で、"後"での営業を、結局、"前"に切り替えて、ナニしたらしい。男に不自由するご婦人がたは、いつの世にも、いらっしゃると見えて、後家さんら相手に、十分営業が成り立った、と、いうのですから、オカマとはいえ、大小の違いはあるにせよ"一物"の持つ力は、大きい。ご婦人にとっては、やはり、ホンモノは《角(ジィャオ) 先(シィェン) 生(シォん)》(ハリカタ)や、お手々でイタシマス、とか、とは、比べモノにならないほどに、味がヨイ、ということになりそうです。ホンモノに勝るものなし、の道理は、すべての商いに通じます。

 ところで、「オカマ、ホモ、男色」などを、中国語では、どういうか? といえば、《?(ジィ) 奸(ジィェン)》というひどい表現あり、《相(シィャん) 公(ゴん)》と、雅やかに表現するものあり、ですが、俗語では《筒(トォん) 屁(ピィ) 股(グゥ)》というヤツがあります。これは、罵倒語にも入る言葉だそうですが、ケツなんかただの筒じゃないか! と言うなかれ。お尻も、ただモノじゃない。
《三(サン) 扁(ピィェン) 不(ブ) 如(ルゥ) 一(イィ) ?(ユェン),錆(ツァオ) 屁(ピィ) 股(グゥ) 等(ドん) 于(ユィ) ?(グオ) 年(ニィェン)》
「おマンコ三つより、ケツの穴一つのほうが具合がヨイ、尻に挿し込みゃ正月を迎えるほどのイイ気分」
という俚諺もある。
この俚諺に出てくる《扁》の字ですが、これは女性の生殖器のこと。
《女(ニュィ) 子(ヅ) 自(ヅ) 有(ヨウ) 扁(ピィェン) 扁(ピィェン) ?(フオ),走(ゾウ) 遍(ビィェン) 天(ティェン) 下(シィヤ) ?(ウー) 不(ブ) 着(ヅァオ)》(河南)
「女には、もとより女物があるので、何処へ行っても、食うには困らない」
という俚諺にも《扁(ピィェン)》は出てきます。この俚諺は、我が日本の「女に余りものなし」に相当する句でしょう。

「男色」を意味する語は、まだほかに、あります。《断(ドゥワン) 袖(シィウ)》(袖を断つ)というヤツです。中日大辞典(愛知大学編)によると、おおむね次のような典故が書かれています。
 漢の哀帝と下臣の董賢とは同性愛の関係があって、ある時、先に目を覚ました哀帝は、自分の袖に頭を置いて、まだ眠っている董賢の眠りを妨げないようにと、哀帝は、自らそおっと、着物の袖を切って、先に起きた、という話から、《断(ドゥワン) 袖(シィウ)》とかまた《断(ドゥワン) 袖(シィウ) 癖(ピィ)》といって、これが男色を意味するようになった。
と、いいます。これが紀元前一、二世紀ころのお話しなのですから、スゴイ。
 このほか《?(ロォん) ?(ヤん) ?(ルワン) 童(トォん)》とか《冶(イエ) 郎(ラん)》というものもある、と、台湾の友人から教わりました。いずれも、古い言葉ですから、日本語も古い言葉で「カゲマ」とでも、これらを訳しておきましょう。

 ところで、世界的な規模を誇るといっていい「中華性文化博物館」という名の博物館が、2004年4月、中国江蘇省同里鎮に、堂々オープンしました。すでに、ご承知のお方もおられましょうが、筆者は、この博物館の顧問でもあることから、紹介を兼ね、宣伝させていただきたい。ココには、中国の古代から民国、そして現代中国の匠による作品にいたるまで、延々脈々、悠々と続いて来た中国の性文化、セックス・カルチャーに関連する珍品文物が収蔵展示されています。場所も、江南の古色漂う同里の町の中、世界遺産の一つ、あの「退思園」の東側に隣接する位置にあります。上海から車で約二時間、いちど、脚を伸ばしてみては如何でしょう。また違った中国文化を垣間見ることができることうけあいます。

 飛行機の苦手な方には、近場をお薦めしましょう。横浜です。「中国珍宝館」と称する私設博物館が、2006年8月、横浜の戸塚区汲沢に、オープンしたのをご存知でしょうか? ここでも、中国性文化の一端を、垣間見ることが、できます。「中国珍宝館」という仰々しいい名前とは裏腹に、陶器類の、逸品(島田恭子作)も一部、ディスプレーを兼ね、展示されているせいでしょう、小規模ながら、館内全体に品のよさが漂い、男女に拘わらず、粋でしゃれた空間に浸ることができるはずです。《 无(ウゥ) 竹(ヅゥ) 令(リん) 人(レン) 俗(スゥ) 》(竹がなければ俗になる)という蘇東坡の謂いではありませんが、この館の中の「借景の間」と称する部屋から見る竹林は、しばし我を忘れさせる美しさがあります。竹があることで、こんなに風雅な雰囲気をかもし出させるものとは、なんと! と、ただ感嘆するばかり、ここだけでも、一見の価値あり、といえます。

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