中国の主要港から船積みされた品物は、三日か四日もあれば日本に着いてしまいます。そこでビジネスマンが頭を痛めるのは、通関に必要な書類です。B/L、インボイス、パッキングリストのコピーがあれば、オリジナルの書類が銀行経由で届かなくともL/G通関で貨物のピックアップができるわけなのですが、そのコピーが、なかなかすんなりとファックスで送られて来ないことが多いのです。少し貿易に慣れた相手でさえ、その人から送られてきたファックスの肝心のところが、まるで見えなかったりすることがママあります。筆者も時々やったことでしたが、もともと原稿の悪いもの、字があまりに小さいもの、薄くて見えにくいものなどをファックスで流したところで、相手に伝わりようがないという単純な道理が、案外わかっていない。FAXは、拡大機ではない、ことが判っていないわけです。やはり気配りの不足、というヤツなのでしょうね、結局、必要な箇所を大書きして、もう一度流して欲しいという、やらでもいい無駄な、催促の電話やファックスを繰り返すことになります。
そのほか、常日頃、商談時には、何故、書類のコピーが早く必要なのか――貨物保管が一期十日間過ぎると、費用が取られる。客への納入が遅れると、それだけ資金回収に影響が生じる、等など――を事前に話しておくことが肝心ですね。そして、「流すなら、はっきり見えるファックスを流しなさい」というところが大切です。薄い字の原稿なら、「いったん濃く、コピーをとって、それを流すように」と、念を押すことを、忘れてはなりません。うっかり者、気の回らない者、貿易の流れを分かっていない者は、どこにでも、いるものです。そんな人たちへ、カッカ怒鳴っても、はじまらないのですから、ここは、貿易の先輩のあなたが、優しく、教えて、あげましょう。
「気が急いていると、熱い粥は食えぬ、走っている馬上では、春秋は読めぬ。」
(注:『春秋』は、孔子が筆を加えた魯国の歴史書)
分かってはいることでも、ついついやってしまうミスのひとつではあります。
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