深沢俊太郎

トップページへ戻る!
ネット中国性文化博物館入口!
書籍出版一覧!
新・中国いろはたとえ歌留多(連載)入口!
《醒世姻縁伝》研究!
ごうりきみちのぶ著「まっくらけ」!


深沢俊太郎の部屋
Shuntaro Fukasawa
新中国いろはたとえ歌留多


「新・新中国いろはたとえ歌留多」
(連載/月二回/毎月10日と24日更新)
No.40 2006年10月10日
新中国いろはたとえ歌留多:連載No.40
 いつだったか「チョベリグ」、「チョベリバ」などという流行語がある、と、娘や息子たちから教えられて、驚いたものでしたが、中国語には、なかなかよくできた流行語があります。標題にあげた言葉なんかは、筆者が傑作、と、思う一つです。現在の簡略字で書くと《美(メイ) ?(リ) ?(ドん) 人(レン)》となります。意味は、「容姿スタイルをよく見せるために、寒い気候も顧みないこと」で、エエカッコし、の女性を皮肉った言葉です。直訳すると「美麗は人を凍らせる」となりますが、この《?(ドん) 人(レン)》》(凍人)は《?(ドん) 人(レン)》(動人――人の心を動かす、感動させる)と、かけ言葉になっているところが、中国語の妙味です。寒さよりも、容姿スタイルを優先する女心を、ユーモラスに皮肉っているところが、ナカナカ鋭く、字面も愉快です。
 周一民氏の労作『北京現代流行語』の中から、流行語というより、今では、むしろ広く一般にとけこみ、使われている言葉といっていいでしょう、ね。それらを幾つか紹介しておきましょう。
《三(サン) 句(ジュ) ?(ホワ) 不(ブ) ?(リ) 本(ベン) 行(ハァん)》
「人間誰しも三言もしゃべれば、自分の本業の話になるものだ」
というだけでは、どうも、ものたりない、プロの商人(ビジネスマン)は、のべつ幕なしに商売のことばかり話していればいい、というものでも、ないように、思います。むしろ、自分の商売以外のこと、それが何であっても、それを如何に深く話せ、相手を魅了させることができるかどうか、が、微妙に商売に跳ね返って来るように、思うからです。是非、頭の片隅に入れておいてほしい言葉たちです。
以下、イタズラ心で、王蒙の詩を、井伏鱒二風に、訳してみました。
《少(シャオ) 一(イィ) 点(ディェン) 偏(ピィエン) ?(ヂィ) ?(ジィ) 端(ドゥワン),
少(シャオ) 一(イィ) 点(ディエン) 气(チ) 急(ジィ) ?(バイ) 坏(ホワイ)》
游(ヨウ) 刃(レン) 有(ヨウ) 余(ユィ) 才(ツァィ) 能(ノん) 幽(ヨウ) 默(モオ)》
 (王蒙)
「ソンナニカタヒジハッテドースルノ、
ソンナニオロオロシテドースルノ、
アソビゴコロノナイトコニャ、ユーモアウィットハウマレナイ」

 北京・新スラングたち
○1《炒(チャオ) ?(ヨウ) ?(ユィ)》
「首にする、解雇する」の意。直訳すると「イカを炒める」となります。これは、広東語から来た言葉で、イカを炒めるとクルクル巻きあがりますね、この様子から来た言葉、といいます。つまり北京語の《卷(ジュェン) ?(プゥ) 盖(ガイ)》(布団を巻く)の喩えが「暇を出す、暇を出される」の意味で使われていたことから、よくこの《炒(チャオ) ?(ヨウ) ?(ユィ)》が《?(カイ) 除(チュ)》(除名する)とか《解(ジィエ) 聘(ピン)》(解任する)などと同じ意味に使われるようになりました。

○2《打(ダァ) 的(ディ)》
「タクシーに乗る」の意。
「タクシー」は、今や英語のTAXIからきた《的(ディ) 士(シィ)》で《打(ダァ) 的(ディ)》《搭(ダァ) 乘(チォん) 的(ディ) 士(シィ)》《乘(チォん) 坐(ズオ) 出(チュ) 租(ズゥ) 汽(チ) ?(チェ)》と同じ意味となります。

○3《港(ガん) ?(ヂィ)》
「香港ドル」のこと。ブラックマーケットでの符牒。ちなみに日本円は《老(ラオ) 日(リィ)》、米ドルは《美(メイ) 子(ヅ)》と呼びます。ついでに、十元は、《一(イィ) ?(ヅァん)》。百元は《一(イィ) ?(クー)》、千元は《?(ドゥン)》、一万元は《方(ファん)》とそれぞれ呼びます。ですから、例えば《五(ウゥ) 方(ファん) 老(ラオ) 日(リィ)》とは五万円。《八(バァ) ?(クー) 美(メイ) 子(ヅ)》となると「八百ドル」。《六(リィウ) ?(ドゥン) 港(ガん) ?(ヂィ)》とは、「六千香港ドル」となります。

○4《跟(ゲン) 着(ヅェ) 感(ガン) ?(ジュエ) 走(ゾウ)》
「深く考えずに成り行きにまかせてコトを行う」の意。これは、台湾の流行歌『跟着感覚走』からきています。陳家麗作詞、陳志遠作曲。蘇(スゥ)?(ルゥイ)という女性歌手が「台北、東京」というアルバムで1987年1月に発売。日本で受け入れられるや、台湾で大ブレーク、彼女の新境地を開いた曲、と、いわれています。これが、何故か中国で流行るのです。それが現在の中国といえましょうか。

○5《K(ヘイ) ?(ダン) (儿)》
「帳簿外の勘定書」のこと。客から受け取った金を全額帳簿に記帳せず、一部くすねて自分のフトコロに入れることを意味します。例えば《他(タァ) 是(シィ) ?(ジォん) K(ヘイ) ?(ダン) 起(チ) 来(ライ) 的(デ)》「彼はくすねた金で成り上がったんだよ」というように使います。

○6《?(ホん) 包(バオ) (儿)》
「お祝いや謝礼のときに、紅い紙の袋に包んで渡すお金」のことですが、一般的に「袖の下、賄賂」を指していうことが多いですね。中国では、これは欠かせません。。

○7《扎(ヅァ) ?(ピィ)》
「生ビール」のこと。しかも瓶詰めのではなく、量り売りのものを指します。広東語からきた語で、英語のdraft beerの音訳です。普通、使われる北京語は、《?(シィェン) ?(ピィ) 酒(ジィウ)》とか《生(シォん) ?(ピィ) 酒(ジィウ)》といいます。

○8《款(クワン) 哥(グー)》
「お金を持っている男」のことを仲間内で、なれなれしい口調でいう際に、使われます。外出には、タクシー、食事は、高級レストラン、身につけるものは、有名ブランドものと、まあ、羽振りのイイお兄さんのことを指します。また、この類の女は、というと、《款(クワン) 姐(ジィエ)》といいます。ときどき、中国の空港内で、派手ハデ女性を見かけますが、こういう人をいのでしょうか。でも、そのバックには《款(クワン) ?(イエ)》(お金持ちの男(パパ))がいたりして……中国の国内線の空港には、それこそいろんな人を見ることが出来て、興味が尽きません。

○9《老(ラオ) 外(ワイ)》
いわゆる「外人さん」を指していう場合と「素人さん」を指していう場合もあり、両方の意味のニュアンスを持っていう場合も、あります。当然、われわれ日本人が中国へ行くと、裏では《老(ラオ) 外(ワイ)》と呼ばれているわけです。

○10《毛(マオ) 片(ピィェン) (儿)》
「エロビデオ、裏ビデオ」のこと。毛沢東の映画では、ありません。ついでですが、毛沢東のことを《老(ラオ) 人(レン) 家(ジィヤ)》とも、スラングでいいます。文革中に、よく云った《毛(マオ) 主(ヅゥ) 席(シ) 他(タァ) 老(ラオ) 人(レン) 家(ジィヤ)》(毛主席さま)からきています。

○11《拍(パイ) 板(バン)》
「決済する、可否を決定する」の意。直訳すると「拍子木を打つ」となりますが、責任者が、最後の決定を下す、という意味で、商売上でも、よく使われる言葉です。

○12《手(ショウ) 榴(リィウ) ?(ダン)》
「贈答用瓶詰めのお酒」の意。コネをつける際の一種の"武器"。酒とくれば、次は、タバコですね。これは《炸(ヅァ) ?(ヤオ) 包(バオ)》(火薬の包み)と、物騒な表現をします。いずれも、戯れ、ふざけていう言葉にちがいありませんが、なにかキキメがありそうな、感じがします。

○13《洋(ヤん) 插(チァ) ?(ドエ)》
「海外留学や海外に出稼ぎに行くこと」を揶揄的に言ったり、冗談っぽく言ったりする際に使われます。八十年代の後半から九十年のはじめにかけて、海外留学の大ブームがありました。海外を目指す中国人が、我もわれも、と、海外にいる知人のツテを求めて、保証人を得ようと、必死になっていました。やっと、晴れて留学にこぎつけても、日本での生活は、楽であるわけはなく、中には、寝食忘れんばかりに、一日中働きづくめで、奮闘しなければならなかった人も、いたようです。

 今は昔、文化大革命というのがあって、そのさ中、《下(シィヤ) 放(ファん)》とか《下(シィヤ) ?(シィャん)》といって、幹部や知識分子が地方農村などの現場へ行かせられ、働かされたわけですが、こうした状況下で使われた言葉に、《下(シィヤ) ?(シィャん) 插(チァ) ?(ドエ)》というのがありました。若き知識人らが、人民公社の生産部隊へ入り、慣れない労働をしたのです。これが正しく、留学した挙句の厳しい過酷なサマに似ているというところから、《洋(ヤん) 插(チァ) ?(ドエ)》(洋行部隊)なるスラングができたのだといいます。

中国語が不得手、というビジネスマンでも、以上挙げた言葉のひとつでも覚えておくと、話の種にはなりましょう。

< 前頁
[ 目次へ戻る]
> 次頁

株式会社トスコのホームページへ!
深沢俊太郎



Copyright(c) Shuntaro Fukasawa. All Rights Reserved.

このページのトップへ戻る!