深沢俊太郎

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Shuntaro Fukasawa
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休 憩 室:中国の春画絵師たち
唐寅(とういん)前頁 <
仇英(きゅうえい)
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 さて、唐寅さんと比肩する画家といえば、仇英(きゅうえい)があげられます。仇英はもともと漆塗りの職人でしたが、周臣について画を学び、文徴明に称賛され世に知られるようになったといわれています。その仇英さん、画を描いては売り、売っては画を描くという、ひたすら画を描く、画ひと筋で生活をした人らしい。明末清初のころの白話小説『醒世姻縁伝』の中に仇十洲の名で登場します。十洲とは仇英の号ですが、この小説の中に、国子監に入監する命がくだって、主人公の狄希陳(てききちん)が故郷の明水(山東省)をあとに北京に上り、住む家を探すくだりがあります。仇十洲の名前は、供人の狄周(てきしゅう)が借家を探し求めて、借家を決めて来たその家の様子を描写したくだりに出て来ます。うらやましいばかりの当時の住まいの様子をかいま見ることができますので、少し引用してみましょう。

「翰林院勤めをしている下役人の官舎である。小さなひと続き三間の室で、中央に入口があり、内は二間に仕切られている。室には壁紙が貼られなかなか整った清潔な室である。金漆塗りの文机が一つ置かれている。高い背のついた椅子も一つ、凝った彫りのある衣文掛けも置かれている。入口のある二間続きの室には艶消しの黒い漆塗りの卓子に金漆を塗った四角な椅子が四つ、その上の壁には仇十洲の手になる「曹大家修史図」の絵が掛かっている。中門が一つ独立した庭、その庭をかこんで西側には一間の厨房、東側に便所がある、甚ださっぱりと風雅な造りである。家主は翰林院の下役人として勤めている人で、姓は李、号を明宇といって、買い入れた官の保有地に自分で建てたもので、この建物の奥が自分達の住宅である。……」
(「醒世姻縁伝」左並旗男訳 第七十五回 兄弟舎発行より)

このように中国の傑作白話古典小説の中に登場するくらいですから、その当時、仇十洲はすでに名を成していた有名な画家であったことが分かります。

仇英(きゅうえい)(1493〜1560)太倉(今の江蘇)の人。字は実父、或いは実夫。号は十洲(じっしゅう)。黄紙と呼ばれるいわゆるバフン紙に古人の名作を模写することからはじめ、その模写は本物にまがう作品であったという。徹底して売画生活を送り、春宮画を数多く描いた画家としても知られる。仇英の描く女人像は、ほっそりと背が高く、顔かたちは中国語でいうところの(卵型の顔)(卵型の顔)つまり「上が丸く下がやや細めの顔立ち」の美女で、唐寅(とういん)のあの「三白法」を踏襲している。苦学発奮、名家大家のよいところを取り入れ、独自の画風を打ち立て、やがて唐寅、文徴明(ぶんちょうめい)、沈周(しんしゅう)らと並び明朝の四大画家の一人と称される。現存する仇英の春宮画はほとんどないらいしいのですが、記録には『十栄』という十種の性態位を描いた作品が明春宮画の巻物の巻頭にあり、それが仇英の手になるもののようです。仇英の世に知られる作品としては、北京故宮博物院収蔵の『燕寝怡情冬』12幅があるとは中華古代性文化展覧館(江蘇省同里)の館長劉達臨教授の話です。

 唐寅と仇英らが描いた春宮画は、当時の絵師たちはもちろんのこと、後の絵師たちにとっては恰好の手本となり、明朝後期には無名の絵師たちの手になる春宮画がかなり出回り、しかもそれらはきわめて質のよい春宮画であったといいます。もはや春宮画は宮中内だけのものではなくなり、広く官僚、豪商などの金持層の間に流行ったばかりではなく、民間巷の店々にまでも広く出回ったことが明代以前の時代の状況と大きく異なるところといえます。需要が多くなれば、出版、印刷に工夫がなされるのは当然の成り行きで、高度な技術水準は明末にピークに達します。オランダの学者高羅佩(R.H.ファン・フーリック)は五色の色彩を駆使した最高の春宮画は1606年〜1624年の間に印刷されたものであり、この時期が中国春宮画の全盛期と指摘しています。しかし量からいえば、民間の隅々までになお一層広く流布していった次の時代、清朝には及ばず、中国の春宮画発展の円熟期、安定期は清朝で迎えたといえます。しかし画質は唐寅、仇英の域を越えたものは出ず、また印刷技術も明代の全盛期に及ぶものは出なかったとは劉達臨教授の指摘です。

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