我々日本人が、中国で接待される宴会は、あらかじめ、時間も場所も、きちんと手配されており、出迎えの車の手配なども、十分にいきとどいていることから、『駆けつけ三杯』とか、標題にあげた『遅れ三杯』などという酒席での習慣の言葉は、ないに等しい。しかし、この日本的、と、思われる言葉は、中国の俚諺の中にも、ありますし、筆者も、過去に、何回か、中国の友人に、この言葉を使われてしまった経験も、ありました。それは、
とか、
と表現します。
また、宴会は宴会でも、送別会の時には、去って行く人に向かって、
といって、やたら飲ませます。
中国の人は、だいたい、酒を勧めるのが上手ですし、すすめるのに、悪意はないわけですから、なんやかや、と、口実をもうけては、飲ませようと、かかってきますので、自分の酒量にあわせて、飲むのが、よいでしょう。でなければ、つぶされてしまいます。
ところで、中国の宴席には、出迎えの時も、商談のときにも、現われなかった人が混じって、出席していることがままあります。そんな経験を持たれた方もいらっしゃいましょう。しかし、これを宴会の便乗にあずかって、タダ酒を飲みに来た"ただの人"なのだ、と思ってはいけません。それなりの目的を持たされての、出席なのですから、ユメ、こうした人たちを、ナイガシロに、してはなりません。ある人は、酒が強く、酒の強いあなたのお相手を、内々に、仰せつかっての出席、であったり、進行中の商談に関しての、銀行融資を担当している人、であったり、政治的バックアップに必要な工作要員、であったり、まさしく、サマザマ、それぞれが、それなりの目的を持っての、或いは、持たされての出席、なのですから、要注意、というわけです。中国の宴会の席は、まさに商談の席、と筆者が強調するのは、こんなところに理由があります。この席で、あなたは、見ラレテイルノデス。
古い話ですが、1996年の7月に、江蘇省の常州に行った時、酒席で、工場長のに教わった口調のよい句がありますので、紹介しておきます。同じ中国の人ですら、中国の北国、黒龍江省へ出張に行った時など、酒を無理矢理、飲ませられるので、閉口する、という話から、飛び出て来たのが、次の句でした。
「一、二、三両の量の酒じゃ、酒とはいえぬ。四、五、六両じゃ、まだまだ口よごし。七、八、九両飲みやぁ、壁を伝っての千鳥足。十両飲(や)りゃ、壁がグルグル動いてアタシは動けない」
中国の人は、お酒でも、特に(焼酎)という酒を飲む時には、その単位を、よくという具合に「斤」とか「両」を使って表現します。、一両は、50ml、一斤は、500mlもの量です。ですから、五十度も六十度もある《白 酒》を「一斤飲める」というと、かなりの酒豪とみなされます。もっとも、最近の中国では、白酒でも、三十度ほどの度数の低いものが流行っているようですが、ときに異様に鼻につくこのバイジュウも、料理によっては、ケッコウ口に合うから不思議です。しかし、筆者には、どうも、度数の高いものの方が、おいしいようにおもいますが、どうでしょうか……そんな度数云々より、酒は、やはり、料理に合わせて選び、飲むものなのでしょうか……いや、酒に目のない筆者の場合は"体調"に因る、としておきましょう。ようするに、何でもイイわけです。
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