「"言い値で買う馬鹿!"って、よくいうだろうがッ!」と、かねがね、商売の先輩に教えられていたものの、筆者が1974年、日中貿易の業界に入ってからの数年間は、戸惑いの連続でした。この業界の大先輩であり、畏友でもあった木元賢輔氏(2005年3月に他界)から、私よりさらに一昔前の1960年代、そのころの中国貿易の話を聞かされ、もっと驚いたものでした。それこそ"値切りも小切りもない"という、我が俗諺どおり、正しく、正札どおりの、一方的に提示された価格で、イワユル『友好商社』という中国のご指名商社に『配慮物資』が与えられた、といいます。その友好商社は、与えられた配慮物資の契約書をプレミアム付きで、専業者や、当時、まだ出入りの許されていなかった大手商社らに、売り渡していた、というのです。中でも、特に、プレミアムの率のいいのは:
『パチパチ、ピョンピョン、ブーラブラ』と、いわれた三品が、あったそうです。
これらが、何か、お分かりでしょうか?
順に、『甘栗、ラビットミート、クラゲ』と、聞いて、笑ってしまいましたが、どうしてどうして、これらの品物は、多いときには、契約書の金額の20%から30%ものマージンが労せず落ちた、といいます。そんな時代も、あったわけです。しかし、現今の日中貿易には、今や、そんな語り草となっている『配慮物資』もなく(?)、かつて、ハバをきかせた『友好商社』という看板もなく、それこそ、金と意志さえあれば、誰もが自由に、ヤレるようになり、現に、熾烈な商談が行われております。
中国側のオッファー価格に対しては、堂々と渡りあえる時代になりました。値切れば、値引きあり、時に、在庫処分もあります。ゆめ『なんせ中国のことだから……』と云うような"謂い"には、耳を貸さずに、通常のビジネス感覚で、中国の"新人類"と接するとよい、と、思います。
「商売は、イワユル専門家に聞くより、自ら三軒歩き回ったほうがよい」
「買い物は、数軒歩け、歩けば歩いただけのことはあるものだ」
「品物は、三軒訊ねてから買えば、損はしない」
やはり足で稼ぐことが肝心。
「徒歩営業が基本」とは、益友・S氏の言葉です。
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